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川 ゚ -゚)無題( ><)


167 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/29(木) 17:35:04.04 ID:iE8URxQ4O

黒い髪の一本一本が宙を舞い、光に透かされて赤みを帯びる。
切り立った崖に、緑色のつなぎ姿をした少女が腰を下ろし、両足をぶらつかせていた。
細くしなやかな指の隣では、短く生えた草花たちがそよ風に揺られ、踊りを楽しんでいる。
彼らの匂いが鼻腔に届けられると、純朴な故郷の景色が鮮やかに蘇った。

澄み切った天上の深い青の下、広がる雲はまるで純白の海のようで、所々で太陽の光を乱反射していた。

と、彼女の足もとから一羽の鳥が風を切って昇っていく。
一瞬遅れて、数十の仲間たちが目の前をばたばたと駆け抜け、幾つかの羽が取り残されていった。
今や手の届かないところまで伸びていった影の群れは、しかし声だけを響かせた。

目を閉じ、鳥達の声に耳を傾けると、混じり込んだ異質な音が浮き出し、大きくなっていく。
閉じ込めていた濃い茶色を瞼から覗かせ、上半身を捻り上げて、一定の調子を刻んでいた彼に声をかけた。

川 ゚ー゚) 「好い眺めだ。君も
座ってみたらどうだ?」

ぽんぽんと、自己の隣を手で叩いた少女に対し、
灰色のつなぎ服を纏った青年の鳶色の瞳が潤み、動きは明らかに嫌悪と恐怖を象った。
   _,、
川 ゚ -゚) 「私の隣が嫌なのかね、ワカンナインデス君」

気分を害されたという風に、わざとらしい声色を奏でると、遠くでさっきの鳥の群れ達が頭上を一回りしていった。
茶色い前髪から数cmといったところで、何かの影が彼の視界を縦に通り過ぎる。

彼の履き古された一足の運動靴の間で弾けたものの正体を確認。
顔から血の気が引くのを嘲笑うかのように、爆撃機の隊列が彼めがけてもう一度、旋回してきた。
普段よりも一層機敏に、ワカンナインデスは500平方m程度の浮島上を転がり始めた。



168 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/29(木) 17:37:05.30 ID:iE8URxQ4O

船団は弾薬を粗方投下し終えると、物資の補給を兼ねて、一際大きい島の方角へ帰っていった。

一方でワカンナイデスはといえば、鳥達の奮闘虚しく、何と見事に爆弾の雨あられを全回避していたのだから驚きだ。
今は、限界まで溜めこんだ乳酸を分解しようと、着色されていない芝生に寝転がり、肺機能を精一杯活用させていた。
遮光も兼ねて、腕で額の汗を拭っていると、より大きな遮蔽物が彼と太陽との間に割り込んできた。

(;><) 「ク―、さん、ひどすぎ、なん、です……!!」

屈みこんでこちらを覗き込んでいた濃い黒に、途切れ途切れの空気の振動をぶつける。
しかし、彼女は薄く艶美な笑みを浮かべるだけで、動じた様子は全くなかった。

川 ゚ー゚) 「だって、ワカンナイデス君が私のこと嫌うんだもの……」

(;><) 「……ゼェ、ハッ……違うん、ですって、わかってる、でしょ!
       っていうか、少しは気づいて、くださいよ!?
       そ、そんなメチャクチャ、危ない場所に、座るなんて、何で出来るのか、わかんないん、です!!」

屈んでいた腰が直線状に戻され、再び苛烈な太陽光がワカンナインデスを襲う。
振り返った彼女が目にしたのは、少しだけ短草たちの潰された、先ほどまで自分が座っていた場所。

なるほど、冷静になって考えれば、結構怖いかもしれないな。
ワカンナインデスの主張を上塗りするだけになるため、推論は口に出さずに、代わりに蹴りでもって返事をした。
太ももを蹴られ、痛がるワカンナインデスに、思いついた考えを飛ばす。

川 ゚ -゚) 「なあに、かえって免疫が付く」

(;><) 「もう、わけわかんないん、です!」



169 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/29(木) 17:38:35.23 ID:iE8URxQ4O

川 ゚ -゚) 「この高尚な言葉がわからんだと……?
      まあいい、何をちんたらしているんだ。
      さっさと次に行くぞ、ワカンナイデス」

きびきびと歩いていった彼女は、地面に描かれた、自然とは不似合いな絵柄を踏んだ。
一定の重量を検知したそれは、一本のパネル付き棒を生やし、続けて簡素な檻を形作る。

川 ゚ -゚) 「次はー……そうだな、ここに行ってるぞ」

数多の未踏破区画の内の一記号を紙に記すと、破りとって地面に置き、重石を載せる。
間を置かずして、彼女の人差し指が画面を叩いた。
絵柄から伸びてきた光が檻内の物体を丸ごと捉えると、一点の輝く球に収縮し、彼方へと飛んでいってしまった。

(;><) 「自分がここにきたんじゃないですかぁ……」

よろよろと立ち上がったワカンナインデスも、クーがいた地点まで足を運び、一連の動作を追った。
緑と白の斑点島を後に残して、来訪者たちは次の探検場所へ、風に運ばれていった。

向かう先は忘却の都。
空を悠然と浮遊し続けている、太古の遺跡。
主人を失ったこの都市を訪れるのは、上昇気流に乗った植物の種子であったり、新しい住みかを探していた渡り鳥であったり。
ごく稀に、雲海を拝もう、空の上を覗きに行こうとした矢先に遭遇する、元主人の遠い親類たちもいた。

だが、地上に戻った彼らを待っていたのは、大抵は鼻で笑われるか、煙たがられるかの二択であった。
御伽噺に胸を躍らせる輩も、極々一部にはいたようだったが。



172 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/29(木) 17:40:45.02 ID:iE8URxQ4O

高度を移動し続ける都市の不可視の障壁は、操っていた者たちが死滅してしまって尚健在であり、
環境は大幅な転換を迎えることはない。
科学技術が発達し、空に打ち上げられた、幾つもの人工物が眼を光らせる今日においてさえ、
先人の遺した置き土産を打ち破ることはできずにいた。

愚直に機能を止めないことが、新たな支配者を遠ざける要因になっているのもわからず、
機械の統率者は環境の保持に力を注ぐ。

しかし、期せずして夢の中を散策する少年少女を、各地のカメラや移動記録で見守る彼は、
久しぶりに身の内に雑音が混じるのを感じていた。

空中都市は、永遠に星の舞う世界を漂うのだろうか。
静かに、大胆に地上へ横たわるその日まで。

答えを出すことすら知らない遺跡は、ただただ二人を眺めているだけだった


[ 2009/01/30 21:36 ] 総合短編 | TB(0) | CM(0)

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