565 :
ζ(゚ー゚*ζとシークレットブーツなようです1/3:2009/01/26(月) 18:20:26.38 ID:SZIJwgFbO
('∀`)「ちょいと道行くお嬢さん! 見てってくんなせぇうちの履き物を!」
繁華街を歩いていた私を呼び止めたのは干からびた声だった。
今思えば、よくあんな声が耳に届いたものだ。
ζ(゚ー゚*ζ「なンですか? 今マヂ急いでるンですケドー…」
('∀`)「必ずあんたが履きてぇっつーお靴があんのよさ! さぁさ、お入りになってぇ」
ζ(゚ー゚;ζ「ちょ…、引っ張ンないでもらえます!?」
('∀`)「遠慮はいらねぇ! 土足でズカズカとおらんちの床を汚してけぇ!」
パねぇ、このオッサンパねぇ。
言われるままに、私は店内へと強制連行された。
真新しい繁華街には場違いなほど小汚い木造の店舗だった。
ζ(゚ー゚;ζ「ッ!」
酷く埃っぽい店内に思わずたじろいだ。
('∀`)「どれでも好きなの履いてみてよーぉ! ベッピンさんにゃ何でも似合うんだから!」
と、言われても商品には下駄や草履が多くとても普段私が履けるようなものはなかった。
567 :
ζ(゚ー゚*ζとシークレットブーツなようです2/3:2009/01/26(月) 18:24:51.78 ID:SZIJwgFbO
ζ(゚ー゚*ζ「下駄ばっかり…あれ?」
30センチほど積まれた下駄の陰に一組だけ白いブーツがあった。
特に装飾が施されている訳ではなかったけど、そのブーツは酷く印象的だった。
('∀`)「やや! 見つかっちまったかー! 家宝の“シークレット”がー!」
ζ(゚ー゚*ζ「“シークレット”?」
そっとそのブーツを手に取ってみた。
見た目よりも少しだけ軽かった。
('∀`)「えぇい持ってけドロボー! そいつぁくれてやっからとっととけぇんなー!」
ζ(゚ー゚;ζ「え? キャッ…押さないで、痛い痛い!」
私は男に無理矢理店から押し出された。
その時に入口にあった段差に躓いて転んでしまった。
私が振り返ったときには店に男の姿はなかった。
あるのは、かつて靴屋だったであろう古びた建物だけ。
ζ(゚ー゚*ζ「何なの…?」
私の腕には先程の“シークレット”がしっかりと抱えられていた。
ζ(゚ー゚;ζ「って、急がないと!」
人を待たせている事を思い出し、私は“シークレット”を抱えたまま彼の待つ店まで急いだ。
568 :
ζ(゚ー゚*ζとシークレットブーツなようです3/3:2009/01/26(月) 18:26:53.38 ID:SZIJwgFbO
( ・∀・)「そんなことがねぇ…」
ζ(゚ー゚*ζ「不思議だけどホント、コレ証拠品」
( ・∀・)「それ、履いてみたの?」
そう言えば、試着もなしに店を追い出されたのだった。
そもそも足のサイズは合っているのだろうか?
( ・∀・)「履いてみなよ、なんで“シークレット”なのか気になるし」
彼にそう言われて、私もこのブーツに少しだけ興味が湧いた。
私は右足からゆっくりとブーツを履き、彼の前に立った。
ζ(゚ー゚*ζ「どう?」
次の瞬間、目の前の彼が少しずつゆっくりと透けていった。
違った。
私が少しずつ消えていってるんだ。
慌てて立ち上がり、彼は私に触れようとした。
彼は大声で何かを叫んでいる様子だったが、私には届かない。
徐々に意識が遠退いて行く。
視界から彼の姿が薄れて行く。
ゆっくり隠れて往く私は、とても気持ちがよかった。
お題:シークレットブーツ