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腐った女とショボンとカメラ


439 :腐った女とショボンとカメラ:2009/01/13(火) 21:49:14.14 ID:CbZX9MJT0

いつものようにショボンはカメラのシャッターを切っていた。
自分の記憶の中と、このフィルムの中に、いま在る景色を焼き付けるために。
ショボンにとってカメラは趣味の枠に収まらないぐらい大好きなものだった。
(´・ω・`)「ん?」
カメラをぶら下げながら散歩しているとズタボロの服装をした人物が川辺の草むらに横たわっていた。

(´・ω・`)「あれは!」
倒れていると思ったショボンは慌てて、人物の方へと駆け寄った。
倒れているのはどうやら女性のようだった。
女性の髪は長く手入れがされていないようで乱れきっていて、服装もジーパンとシャツを着ているものの土で汚れていた。
(´・ω・`)「だ、大丈夫ですか?」
優しい口調で呼びかける。
しかし、応答がない。
ショボンはもう少し強い声で呼びかけた。
(´・ω・`)「大丈夫ですかい!」

女性はゆっくりとその乱れた体を起こした。

(*゚ー゚)「静かにしてよ、せっかく眠ってたのに・・・」



441 :腐った女とショボンとカメラ:2009/01/13(火) 21:50:42.67 ID:CbZX9MJT0

(´・ω・`)「眠っ・・・てた?その格好で?」
(*゚ー゚)「眠ってなければ、なにしてたっていうのよ」
(´・ω・`)「は、はぁ・・・」
とはいえ、いまは冬だ。寒くないのだろうか、とあらゆる疑問がショボンの脳内に分泌される。
(*゚ー゚)「ったく。で、なに?」
質問をしようとしていたその時、相手に質問を返されてしまった。
ショボンが彼女のもとに寄って来た理由は生きているか心配だったからであって、それ以上の用はない。
生きていれば、それ以上に用はないのだが「なに?」という問いに「なんでもない」と返す気にはなれなかった。

(´・ω・`)「しゃ、しゃ、写真撮らせてください」

(*゚ー゚)「ハァ?」



442 :腐った女とショボンとカメラ:2009/01/13(火) 21:52:57.85 ID:CbZX9MJT0

とっさに出てきた言葉が「写真を撮らせてください」だった。
ショボンは、写真を撮るのが好きであると同時に、珍しいものを撮るのも好きなので強ち間違いではなかった。

(*゚ー゚)「私の写真を撮りたいんの?この、私よ?」
乱れた髪、土で汚れた服と顔、寒さで赤くなった頬。
外で暮らしているんじゃないか?と思わせるような風貌なのだ。
しかし、どこか魅力があるようにショボンは感じた。
(´・ω・`)「う、うん。撮らせて欲しいんだ」

(*゚ー゚)「物好きな人もいるものね」
自分の容姿を気にしてか、怒るわけではなく少し遠慮しているようだった。
(´・ω・`)「撮って、いいかい?」
何故こんなところで眠っていたのか?、と今すぐにでも聞きたい所だったが、写真を撮りたい欲求がなぜかそれに勝っていた。
目の前にいる彼女に対する魅力がショボンの中で大きくなっていった。
(*゚ー゚)「こんな腐った女の写真をね。いいわよ。タダで撮らせてあげる」

冷たい風が吹いた。

どこか心地よかった。



444 :腐った女とショボンとカメラ:2009/01/13(火) 21:55:13.56 ID:CbZX9MJT0

(*゚ー゚)「で、どうすればいいの?」
(´・ω・`)「えっと、じゃあ、そのままの格好で立っていてください」
ショボンは内心、突然話しかけられた他人によくもまあ、ここまで付き合ってくれるもんだと不思議に思った。
そんなことを考えながら、ショボンはカメラを構える。
日が暮れようとしていた頃だ。
川がオレンジ色に染まり、草むらが揺れる。
そこに一人の女性が入り込みショボンの持つカメラのフィルムに焼き付かれていく。
風景を乱さないように、風景の揺れを壊さないように、風景に夢を吹き込むように。
ショボンはシャッターを切っていった。
(*゚ー゚)「あんた、プロなの?」
(´・ω・`)「い、いや素人です・・・」
(*゚ー゚)「馬鹿じゃないの」
そんなやり取りを続けながら、ショボンは数十枚の写真を撮り収めた。
(´・ω・`)「撮りたい写真は取れました、ありがとうございます」
(*゚ー゚)「あ、そう。じゃ、これで終わりね。じゃあね」
(´・ω・`)「は、はい」

ショボンはどこか寂しく思った。
そして、やはりこんな所に女性が一人でいるのもなんだか心配だった。
一緒に帰りませんか?と聞こうとした瞬間だった。

(*゚ー゚)「あれ、なんだか、体が」

その女性はその場に倒れてしまった。



445 :腐った女とショボンとカメラ:2009/01/13(火) 21:57:44.05 ID:CbZX9MJT0

(´・ω・`)「気づきましたか?」
ショボンが尋ねる。
(*゚ー゚)「え?え?ここはどこ?」
女性が周りを見渡すとそこは六畳半ほどの部屋だった。
(´・ω・`)「僕の家です。あなたが倒れたんで運んで来たんですよ」
(*゚ー゚)「ちょっと!勝手に部屋に連れ込むなんて!」
(´・ω・`)「かといって外に置いていけるはずがないじゃないですか」
女性はコタツで眠っていた。
テーブルの上にそっと温かいココアが置かれた。
(´・ω・`)「飲んでください」
(*゚ー゚)「・・・」
女性はそっとココアに手を伸ばす。
久しぶりに触れたその温もりは掌を心地よく温めた。
(´・ω・`)「あの寒い草むらで、本当に眠ってたんですか?」
(*゚ー゚)「本当に眠ってた」
(´・ω・`)「そうですか・・・」

女性は帰ろうと周りを見渡すと、コタツの机の上に写真が数枚乗っているのを見つける。
(*゚ー゚)「これは?」
(´・ω・`)「さっき撮った写真ですよ。あなたが眠っている間に印刷しておきました。よかったら、もらってください」

女性はそっと写真に手を伸ばす。



448 :腐った女とショボンとカメラ:2009/01/13(火) 22:00:16.67 ID:CbZX9MJT0

その写真に写っている自分はまるで別人のようだった。
風貌が乱れていて別人、という意味ではない。
いや、もしかしたら、風貌が乱れているせいなのかもしれない。

とにかく美しかった。

その写真の一枚、一枚から風の音、川の音、草の揺れる音が聞こえるようだった。
いや、聞こえたのだ。
夕日が沈もうとする、その切ない瞬間に自分が溶け込んでいた。

とても鮮明に写されていた。

これは画素数の問題なのか。
彼のカメラマンとしての腕の問題なのか。
いったい何故に、こんなにも、こんなにも。

自分が美しいと思えてしまうのか。

そして、なによりも愛おしかった。

自分が写っているその風景が、瞬間が。




449 :腐った女とショボンとカメラ:2009/01/13(火) 22:02:07.16 ID:CbZX9MJT0

(*゚ー゚)「うぅ・・・っ」
気づいたら、涙が流れていた。
(´・ω・`)「えぇぇぇぇっ!?ど、どうしたんですか!?な、なにもしてないですよ!!」
(*゚ー゚)「ち、ちがうぅっっ・・・」
(´・ω・`)「髪とか、乱れてるけど!乱れてるけど!それはもとからでしょ!」
(*゚ー゚)「ちがっううぅぅ」
(´・ω・`)「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
声が震えて言葉にならない。
そっとココアを口へと運ぶ。

モデルをやっていた。
けれど、モデルなど幾らでも存在するのだ。
自分だけが必要とされているわけではない。
老いていく美貌に恐怖を感じた。
いつか自分は、この世界で生きられなくなる日が来るのじゃないかと。
結婚すればいいとか、そんな声も聞いたけど。
老いていく自分がやっぱり怖かった。
彼女のモデルとしての自信はどんどん薄れていった。

自分の存在意義ってなんなんだ?

(´・ω・`)「ど、どうしたんですか?しっかりしてくださいよお!僕、そっちの気ないですから!」

しかし、彼からもらったこの写真には。
風貌が乱れていても、顔が汚れていても、美しいと感じた。
愛しいと感じた。
時が止まっていた。
止まっているのに、音が聞こえた。



451 :腐った女とショボンとカメラ:2009/01/13(火) 22:03:49.32 ID:CbZX9MJT0

落ち着きを取り戻した彼女はショボンに理由を話した。
(*゚ー゚)「あのね、私ね」
(´・ω・`)「うんうん」

(*゚ー゚)「で、なにもかもが嫌になって。こんなんなら最初から汚れてたほうがましよ!ってあそこで自分を汚してたらこんな格好になって」
(´・ω・`)「なんとアホな・・・」
(*゚ー゚)「疲れて眠ってたの」
(´・ω・`)「なんとアホな・・・」
(*゚ー゚)「お気遣いありがとう、でも正直、心配されるほどのことでもなかったのよね」
(´・ω・`)「なんとアホな・・・自分なんだ!!」

自分なんか、写される価値はないのだ。
老いていく度に価値は減ってゆくのだ。
そう思っていた気持ちが、少し薄れた。



452 :腐った女とショボンとカメラ:2009/01/13(火) 22:05:58.12 ID:CbZX9MJT0

(*゚ー゚)「この写真、もらっていっていい?」
(´・ω・`)「え、ああ、うん」
(*゚ー゚)「ねぇ、あなた、カメラマンにはなる気ないの?」
(´・ω・`)「なんとアホな・・・!」

うつす人、うつされる人、その両方があってこその世界だ。
その、うつしあえる人にいつ出会うか、それを彼女は、ショボンは待っている。
自分の価値を見出すことの出来る、その人を待っている。

(*゚ー゚)「そう。また機会があったら私を撮ってね」
(´・ω・`)「なんとアホな・・・」

彼女はショボンの部屋のドアをゆっくりと開いた。
冷たい風が頬を掠める。

(´・ω・`)「元気にやってくださいね。応援してますよ」
(*゚ー゚)「ええ、ありがとう。私も元気が出たわ」

ドアが閉まる。

(´・ω・`)「またくだらないものを撮ってしまった・・・」

ショボンは、机の上に置かれたココアを片付けながら呟いた。

そしてショボンは今日も自分が撮った写真を見ながら自画自賛し、ニヤニヤと微笑む。

(´・ω・`)「おわりです」



[ 2009/01/13 23:27 ] 総合短編 | TB(0) | CM(0)

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