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/ ,' 3 おじいちゃんの昔話のようです


319 :/ ,' 3 おじいちゃんの昔話のようです:2009/01/07(水) 02:21:37.27 ID:EAjpgsKl0

真夏の日差しがさんさんと降り注ぐ縁側。
私はそこに寝そべり、冷えた緑茶を飲んでいた。
脇では小型の扇風機が稼動し、真夏の暑さを和らげてくれている。

/ ,' 3「あの日も……こんな天気だったかな」

日差しを浴び、かの青春時代がありありと思い浮かぶ。
どうも年をとると、しょっちゅう昔のことを思い出してしまう。
まあ、先が無いのだから昔を思い出すのは仕方の無いことかも知れないが。

ζ(゚ー゚*ζ「おじーちゃーん!」

物思いにふけっていると、庭先から孫娘の元気な声がした。
空色のワンピースに麦藁帽を被り、太陽に負けじと輝くような笑顔。
この孫娘を見ていると、亡き妻を思い出すものだ。

パタパタと縁側に上り、孫娘は扇風機にあたりだした。
見れば随分と汗をかいている。
私は冷蔵庫から緑茶とスイカを出してやった。



321 :/ ,' 3 おじいちゃんの昔話のようです:2009/01/07(水) 02:23:12.62 ID:EAjpgsKl0

ζ(゚ー゚*ζ「おじーちゃん、何やってたの?」

/ ,' 3「昔の事を思い出してたんだよ」

ζ(゚ー゚*ζ「えー! 聞かせて聞かせて! どんなこと?」

私の出したスイカを頬張りながらも、孫娘は笑顔を絶やさない。
この笑顔は、老い先短い老人の数少ない楽しみだ。
この笑顔に応えぬわけには行かないだろう。

/ ,' 3「よしよし、じゃあちょっと待ってな」

私は物置から小型の器械仕掛けの古時計を持ってきて、孫娘の前に置いた。
埃を払ってから、文字盤のフタを開ける。

ζ(゚ー゚*ζ「これなーに?」

/ ,' 3「タイムマシンだよ」

あながち嘘ではない。
私はこの時計の針を戻すだけで、昔の思い出をありありと思い出すことができる。
思い出すというより、精神だけがタイムスリップしているような感覚だ。

/ ,' 3「じゃ、長いかもしれないが……」

私は時計の針をゆっくりと戻し始めた。



323 :,' 3 おじいちゃんの昔話のようです:2009/01/07(水) 02:24:50.15 ID:EAjpgsKl0

真夏の日差しがさんさんと降り注いでいる。
海面に光が反射して、ちょっと眩しい。
耳には小波の音が聞こえていた。

私は辺りを見回す。
宝石のように輝く砂浜。
エメラルドブルーの海。

そうか、ここはあの時の海岸だ。

ξ゚⊿゚)ξ「あんた、ボケーッと何突っ立ってんのよ?」

(;^ω^)「おっ!?」

後ろから不意に声をかけられて、私は飛びのいた。
目の前には、在りし日の婆さんが立っている。
青いワンピースに麦藁帽。

ξ゚ー゚)ξ「プッ……馬鹿じゃないの」

そして、輝くような笑顔。



324 :/ ,' 3 おじいちゃんの昔話のようです:2009/01/07(水) 02:26:40.75 ID:EAjpgsKl0

ξ゚ー゚)ξ「あんたにしては気が利くじゃない、こんなところ知ってるなんて」

( ^ω^)「おっお、僕は釣りばっかりしてるから、こういう場所も知ってるんだお」

気がつけば、私の体もいつかのような若々しい姿になっていた。
口からは自然に言葉が出てくる。

そうだ、僕はこの辺境の島の生まれ。
暇さえあれば釣りをしている。
今日はツンを景色の綺麗な海岸につれてきたのだ。

地元の人間でも、かなり土地勘がないと知っていないような場所。
観光客はおろか、近所の人すら居ない。
デートスポットにはもってこいだと、以前から密かにマークしていた。

ξ゚ー゚)ξ「綺麗な海ね」

( ^ω^)「全くだお」

僕達はその場に座り込み、きらめく海を眺める。
カモメの鳴き声と小波がBGMになってなんともロマンチック。
僕は内心ガッツポーズしていた。



326 :/ ,' 3 おじいちゃんの昔話のようです:2009/01/07(水) 02:28:04.07 ID:EAjpgsKl0

ξ゚ー゚)ξ「ねぇ、ブーン」

( ^ω^)「何だお?」

ξ゚ー゚)ξ「コンクリートに囲まれて、一生コンクリート詰めで生きていくなんて嫌」

ξ゚ー゚)ξ「私、大人になったらここに住むわ」

僕は驚いた。
過疎化が進んでいるような辺境の島だし、ツンのような子は珍しい。
ツンのような都会の子は田舎が嫌いなものだとばかり思っていた。

ξ゚ー゚)ξ「でも、ここに住むのには家が必要よね」

そりゃあそうだ。
ツンはここに越してきたわけではない。
つい昨日、旅行に来ただけである。

僕とツンが仲良くなったのも、同年代だったのと、お互い釣りが好きだったからというだけの理由だ。
もっとも、ツンは釣堀でしか釣りをしたことが無かったらしいが。



327 :/ ,' 3 おじいちゃんの昔話のようです:2009/01/07(水) 02:30:20.21 ID:EAjpgsKl0

ξ゚ー゚)ξ「あんた、将来何になるの?」

( ^ω^)「多分、父ちゃんの後を継いで漁師だお」

というより、僕は馬鹿だから他に就職先が見当たらない。
行こうと思えば都会にも行けるが、僕はこの島が好きだ。
この島を離れるつもりは無い。

ξ゚ー゚)ξ「じゃ、できる範囲で手伝うからあんたの家に住まわせて」

(;^ω^)「……へ?」

僕は一瞬、ツンの言葉の意味が分からなかった。
しかし、彼女が顔を真っ赤にしているのを見てなんとなく意味が分かった。
同時に僕も顔が真っ赤になる。

その時、ツンが自分の唇を僕の唇に押し付けた。



329 :/ ,' 3 おじいちゃんの昔話のようです:2009/01/07(水) 02:33:01.00 ID:EAjpgsKl0

ξ////)ξ「あ、あ、あ、あんたは馬鹿だからこれくらいしないと私のこと忘れちゃうでしょ?」

もはや僕は応答できなかった。
突然の出来事に頭がオーバーヒートしてしまっている。
呂律が回らない。

(*^ω^)「えええええと、こここここれはその……」

ξ////)ξ「ほ、ほらっ! これもついでにあげるわよ! でも、後で返してよね!」

ツンは履いていたビーチサンダルを僕に放り、逃げるように去っていった。

僕の頭はついにパンクした。
僕は顔から煙を噴きながら、その場にぶったおれた。


しばらくして目が覚めると、そばにツンのビーチサンダルがあった。
キスだけだったら、なんだ夢かと忘れてしまっただろう。
どちらにしても夢のような出来事であったが。



330 :/ ,' 3 おじいちゃんの昔話のようです:2009/01/07(水) 02:35:44.88 ID:EAjpgsKl0

数年後、ツンは本当に私の家に「サンダルを返してもらう」と押しかけてきて、そのまま私の家に居ついた。
この時計はツンが大切にしていた物で、どうやら実家から持ってきたらしい。

幾分もしないうちに私達は結婚し、子宝にも恵まれた。
そして子が子を産み、いつしか孫娘のデレが生まれた……

/ ,' 3「……というわけなんだよデレ」

ζ(- -*ζ「スー……スー……」

針を戻すのを止めてデレのほうを向くと、デレは寝息を立てていた。
どうやら老人の昔話というものは、子供には退屈に思えるものらしい。
私は苦笑し、デレを日陰に移してやった。


緑茶を喉に流し込みながら、デレの寝顔を眺める。
見れば見るほど、それはツンに生き写しだ。

老い先短い老人の、数少ない楽しみ。
それは、孫娘に亡き妻の姿を重ねることである。


おわり







お題:
真夏のビーチサンダル
器械仕掛けの古時計



[ 2009/01/07 21:07 ] 総合短編 | TB(0) | CM(0)

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