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以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/09/18(金) 01:35:30.74 ID:L8FJNECl0
海―――
暗く、全てを飲み込んでしまいそうな夜の海。
月の冷たい光が水面を照らし、まるで生き物のようにうねっているのが見える。
いつまでも見ていて飽くことがなかった。
('A`)「……」
今から入水自殺をしようというのにドクオの心は穏やかだった。
死の恐怖、生への執着、両者の激しい葛藤があるものと思っていた。
しかし今、死を前にして何一つ感じるものは無い……。
ただ海に魅入っていた。
浜辺の波打ち際に立ち沖の方を眺める。
目の前にほとんど欠けてしまった月が見えた。
暗闇が水平線を曖昧にして月がまるで海に浮かんでいるようだった。
ふと、この海を進んでいけば月まで辿り着けるような気がした。
無意識に歩を進める。
くるぶしが、腰が海水につかる。そして頭まで沈むとそのまま海底に飲み込まれていった。
だれもいなくなった夜の浜辺、波の音だけがザアザアと静かだった……。